メジャーリーグベースボール(MLB)において、その年に最も活躍した選手に贈られる「MVP(最優秀選手賞)」。この賞を手にするのは、数千人というプロ野球選手の中で、毎年わずか2名(ア・リーグとナ・リーグ各1名)だけです。野球ファンであれば、自分の好きな選手が選ばれるかどうかは、シーズン終了後の最大の関心事ではないでしょうか。
この記事では、MLB歴代MVPランキングに焦点を当て、過去に複数回受賞したレジェンドたちや、圧倒的な成績で満票受賞を果たした選手を詳しく紹介します。特に近年、日本人選手として異次元の活躍を続けている大谷翔平選手の立ち位置も含め、メジャーリーグの歴史を彩るスターたちの軌跡を振り返ってみましょう。野球観戦がより一層楽しくなる知識を詰め込みました。
MLB歴代MVPランキングで見る最多受賞者たちの偉大な足跡

メジャーリーグの長い歴史の中で、MVPを複数回獲得することは並大抵のことではありません。多くの殿堂入り選手でも1回、あるいは一度も手にできないまま引退することが珍しくないからです。まずは、受賞回数に基づいたランキング形式で、歴史に名を残す強打者たちを一覧で見ていきましょう。
| 受賞回数 | 選手名 | 受賞年 |
|---|---|---|
| 7回 | バリー・ボンズ | 1990, 1992, 1993, 2001, 2002, 2003, 2004 |
| 3回 | マイク・トラウト | 2014, 2016, 2019 |
| 3回 | 大谷翔平 | 2021, 2023, 2024 |
| 3回 | アルバート・プホルス | 2005, 2008, 2009 |
| 3回 | アレックス・ロドリゲス | 2003, 2005, 2007 |
| 3回 | マイク・シュミット | 1980, 1981, 1986 |
| 3回 | ミッキー・マントル | 1956, 1957, 1962 |
| 3回 | ヨギ・ベラ | 1951, 1954, 1955 |
| 3回 | スタン・ミュージアル | 1943, 1946, 1948 |
| 3回 | ジョー・ディマジオ | 1939, 1941, 1947 |
| 3回 | ジミー・フォックス | 1932, 1933, 1938 |
圧倒的な記録を持つバリー・ボンズの7度受賞
MLBの歴史において、MVP受賞回数で群を抜いているのがバリー・ボンズです。彼はキャリアを通じて計7回ものMVPに輝いており、これは2位の3回を大きく引き離す驚異的な記録です。特に2001年から2004年にかけての4年連続受賞は、今後誰も破ることができないのではないかと言われるほどの圧倒的なパフォーマンスでした。
当時のボンズは、打席に立つだけで相手投手が勝負を避けるほどの威圧感を持っていました。シーズン73本塁打というメジャー記録を樹立した2001年を筆頭に、出塁率や長打率でも歴史的な数値を叩き出しています。彼の記録には薬物使用疑惑という影がつきまといますが、技術的な卓越さと選球眼の鋭さは、当時の野球界を支配していました。
ボンズの受賞歴は、ピッツバーグ・パイレーツ時代とサンフランシスコ・ジャイアンツ時代の両方にまたがっています。俊足巧打の外野手としてスタートし、後に歴史的なパワーヒッターへと変貌を遂げたキャリアは、まさに規格外の一言に尽きます。ランキングの頂点に君臨する彼の数字は、近代野球における一つの到達点と言えるでしょう。
3回受賞の壁を突破した現代の天才たち
ボンズの7回に続くのが、3回の受賞を果たした10名の選手たちです。現代のファンにとって馴染み深いのは、マイク・トラウトやアルバート・プホルス、そしてアレックス・ロドリゲスでしょう。彼らは全盛期において「世界最高の野球選手」の名を欲しいままにしていました。特にプホルスは、デビューから10年連続で打率3割・30本塁打・100打点を達成するという安定感でMVPを勝ち取りました。
マイク・トラウトもまた、現代野球における最強のオールラウンダーとして知られています。彼は受賞した3回以外にも、投票で2位に4回も入っており、もし運が味方していればボンズに迫る回数を受賞していた可能性もあります。トラウトの凄さは、打撃だけでなく守備や走塁を含めた総合力の高さにあり、セイバーメトリクスの指標であるWAR(代替選手と比較してどれだけ勝利に貢献したか)で常にトップを走り続けました。
3回受賞というラインは、野球殿堂入りを確実にするひとつの目安ともなっています。ここに名を連ねる選手たちは、単に1年だけ突出した成績を残したのではなく、長年にわたってリーグの顔として君臨し続けた証です。彼らがプレーする時代に野球を観戦できることは、ファンにとっても非常に幸福なことだと言えるのではないでしょうか。
大谷翔平選手が刻む新たな歴史と3度目の栄冠
2024年、日本の宝である大谷翔平選手が自身3度目のMVPを受賞しました。しかも、これまでの2回(エンゼルス時代)とは異なり、ドジャーに移籍してナ・リーグでの受賞となった点は非常に大きな意味を持ちます。両リーグでMVPを受賞したのは、歴史上フランク・ロビンソン以来、2人目という快挙です。彼はまさに、現代のMLB歴代MVPランキングにおいて最も注目される存在となりました。
2021年と2023年は、投打二刀流という野球の常識を覆すプレースタイルで、いずれも満票で受賞しました。そして2024年は、右肘の手術の影響で打者に専念しながらも、「50本塁打・50盗塁(50-50)」という前人未到の記録を打ち立て、指名打者(DH)専任選手としては史上初となるMVPを獲得しました。これは打撃と走塁だけで、リーグで最も価値のある選手だと認められた結果です。
大谷選手の凄みは、常に高い目標を掲げ、それを現実のものにしていく進化のスピードにあります。3度の受賞はすでにレジェンドの域に達していますが、まだ現役バリバリの選手であることを考えると、今後さらに受賞回数を伸ばす可能性は十分にあります。バリー・ボンズの持つ7回という不滅の記録にどこまで迫れるのか、世界中のファンが熱い視線を送っています。
異次元の強さ!満票受賞を果たした伝説のプレイヤーたち

MVP受賞者の中でも、特に評価が高いのが「満票(Unanimous)」での受賞です。これは、投票権を持つすべての記者が1位票を投じたことを意味し、その年に文句なしでリーグ最強だったことを証明するものです。歴代でもこの満票受賞を果たした例は限られており、選ばれた選手たちはまさに伝説級の活躍を見せました。
満票MVPの難易度と過去の達成者
満票でMVPに選ばれることは、技術的な成績だけでなく、周囲に「彼以外には考えられない」と思わせる圧倒的なインパクトが必要です。歴史を振り返ると、ミッキー・マントルやフランク・ロビンソン、レジー・ジャクソンといった往年の大スターたちが名を連ねています。しかし、これほど長い歴史がありながら、その回数は決して多くありません。
近年では、2014年のマイク・トラウトや2015年のブライス・ハーパーなどが満票で選出されました。彼らの成績は、打率や本塁打といった伝統的な数字だけでなく、チャンスでの強さやチームへの貢献度という面でも他を圧倒していました。記者の好みや評価基準が多様化する現代において、全員の意見を一致させることは、かつてよりも難しくなっているとも言われています。
満票受賞のニュースが流れると、その選手の歴史的価値が一気に高まります。単なる「その年の1番」ではなく、「歴史に残る最高のシーズンを送った選手」として記憶されるからです。こうした圧倒的な存在が現れることは、メジャーリーグという舞台がいかにハイレベルで、かつドラマチックであるかを象徴している出来事と言えるでしょう。
大谷翔平という唯一無二の「満票の常連」
満票MVPというトピックにおいて、大谷翔平選手の名を出さないわけにはいきません。彼は2021年と2023年にア・リーグで満票MVPを受賞しました。さらに2024年のナ・リーグでも満票で受賞し、なんとキャリアで3度の満票MVPという、史上初の快挙を成し遂げました。これまでの歴史で複数回、満票で選ばれた選手は彼しかいません。
2021年は、ベーブ・ルース以来となる本格的な二刀流での活躍が全米に衝撃を与えました。打者として46本塁打、投手として9勝を挙げる姿は、まさに漫画の世界から飛び出してきたようでした。2023年も、右肘の故障でシーズン終盤を欠場しながらも、本塁打王を獲得しつつ投手としても圧巻の数字を残しました。そして2024年の50-50達成による満票受賞は、彼の身体能力が底知れないことを証明しました。
大谷選手がこれほどまでに記者たちを納得させる理由は、その数字の特異性にあります。比較対象となる過去の選手が存在しないため、議論の余地なく「彼が一番だ」という結論に至るのです。3度の満票受賞という事実は、彼がメジャーリーグの歴史においていかに特別な存在であるかを物語っています。
満票受賞は、これまでメジャーリーグ史上20例ほどしかありません。その中で3回も達成している大谷選手は、まさに「生きる伝説」と言っても過言ではないでしょう。
野手だけではない!投手によるMVP受賞の価値
通常、MVPは毎日試合に出場する野手が選ばれる傾向が強いですが、稀に投手が選出されることがあります。投手には「サイ・ヤング賞」という専門の賞があるため、MVPまで獲得するには、リーグ全体の勝敗を左右するほどの異次元の投球が求められます。近年では、2011年のジャスティン・バーランダーや2014年のクレイトン・カーショウがその壁を打ち破りました。
バーランダーは2011年、24勝5敗、防御率2.40、250奪三振という圧倒的な成績で投手三冠に近い数字を残し、チームを地区優勝へ導きました。また、カーショウも2014年に防御率1.77という驚異的な安定感を見せ、ノーヒットノーランも達成するなど、非の打ち所がないシーズンを送りました。投手がMVPを受賞する際は、その圧倒的な支配力が選考の決め手となります。
投手としてのMVP受賞は、MLB歴代MVPランキングの中でも特別な輝きを放ちます。打者が3割、30本塁打を打つのとはまた違う、マウンドから試合を支配する孤独なヒーローとしての評価だからです。現在では投手の分業制が進み、完投数が減っているため、今後投手がMVPを獲得するハードルはさらに高くなると予想されています。
時代を超えて愛されるレジェンドたちのMVPエピソード

MVPの歴史を紐解くと、記録だけでなく、その背景にある人間ドラマや時代の空気感が見えてきます。かつての大スターたちがどのようにしてその称号を手にしたのか、そしてなぜ彼らが今もなお語り継がれているのか、いくつかのエピソードを紹介します。
ベーブ・ルースが一度しか受賞できなかった理由
野球の神様として知られるベーブ・ルースですが、意外なことにMVPの受賞は1923年の1回きりです。あれほどの成績を残しながら、なぜランキングの上位にいないのか不思議に思う方も多いでしょう。その理由は、当時のMVP選考ルールにありました。かつては「一度受賞した選手は二度と選ばれない」という制限や、選考システム自体が安定していなかった時期があったのです。
もし現在のルールで当時から選考が行われていたら、ベーブ・ルースは間違いなく5回、10回と受賞していたはずです。彼は本塁打王を12回も獲得し、打点王や首位打者にも輝いています。彼の存在そのものがメジャーリーグの人気を爆発させ、野球というスポーツをアメリカの国技にまで押し上げました。数字だけでは測れない貢献度が彼にはあります。
ルースの功績は、今の二刀流・大谷翔平選手と比較されることで再び脚光を浴びています。100年以上前の記録が、今の現役選手と比較されること自体が、ルースの偉大さを証明しています。MVPの回数こそ少ないですが、彼は永遠にメジャーリーグの象徴であり続けるでしょう。歴史を知ることで、現在の選手の凄さもより深く理解できるようになります。
テッド・ウィリアムズと記者たちの確執
「打撃の神様」と呼ばれたテッド・ウィリアムズも、2回のMVPを受賞した伝説の選手です。彼は1941年に打率.406という、現代ではほぼ不可能とされる「4割打者」となりました。しかし、この年彼はMVPを受賞できませんでした。その理由は、56試合連続安打という大記録を樹立したジョー・ディマジオがいたこと、そしてウィリアムズ自身がメディアに対して辛辣だったことが影響したと言われています。
ウィリアムズは非常にプライドが高く、記者との関係が良好ではありませんでした。そのため、最高の成績を残しながらも、投票で損をすることが多々あったのです。しかし、彼の打撃技術は間違いなく史上最高レベルでした。三冠王を2回獲得しながらも、その年にMVPを逃すという、今では考えられないような逆転現象も経験しています。
それでも彼は、戦地への赴任によるブランクがありながら通算521本塁打を放ち、殿堂入りを果たしました。彼の物語は、MVPという賞がいかに記者の主観や人間関係に左右されてきたか、という歴史の一側面を教えてくれます。同時に、そうした逆境を跳ね返して2度受賞した彼の凄みが際立つエピソードでもあります。
ウィリー・メイズが見せた走攻守の完璧な融合
1950年代から60年代にかけて活躍したウィリー・メイズは、2度のMVPを受賞しました。彼は「5ツールプレイヤー(打率、パワー、走塁、守備、送球のすべてに秀でた選手)」の元祖とも言える存在です。センターで見せた伝説の背走キャッチ「ザ・キャッチ」は、今も語り継がれる名場面です。
メイズの魅力は、単なる数字以上の華やかさにありました。本塁打を量産する一方で、果敢に次の塁を狙う走塁、そして広大な守備範囲。彼がグラウンドにいるだけで試合の流れが変わると言われました。2回の受賞に留まったのが不思議なほど、彼は毎年のように素晴らしい成績を収めていました。当時のナ・リーグにはミッキー・マントルら強力なライバルが多かったことも影響しているでしょう。
メイズのプレーは、後の多くの選手に影響を与えました。バリー・ボンズは彼を叔父のように慕っており、メイズのプレースタイルを受け継いでいます。ランキングの中では受賞回数がすべてではありませんが、メイズのように「記録にも記憶にも残る」選手こそが、MVPという称号にふさわしい真のスターだと言えるでしょう。
往年の名選手たちの受賞エピソードを知ると、当時の野球界の熱狂が伝わってきますね。
ルール変更や記者の心情が絡むMVPレースは、今も昔もファンの格好の議論の的になっています。それもまた、野球観戦の大きな醍醐味です。
近代野球の象徴!Mike TroutとAlbert Pujolsの支配力

2000年代以降、メジャーリーグの顔として長く君臨したのがアルバート・プホルスとマイク・トラウトです。彼らはそれぞれ異なる魅力でリーグを支配し、MLB歴代MVPランキングでも上位に位置しています。彼らがどのようにしてその地位を築いたのか、その圧倒的な成績の裏側を見ていきましょう。
アルバート・プホルス:史上最も安定した打撃機械
アルバート・プホルスは、セントルイス・カージナルス時代に3度のMVPを受賞しました。彼の最大の特徴は、その圧倒的な安定感です。デビューから10年連続で「打率3割・30本塁打・100打点」という驚異的な記録を残し、まさに「打撃の機械」と呼ぶにふさわしい活躍を見せました。チャンスでの強さも群を抜いており、相手チームからは「最も勝負したくない打者」として恐れられていました。
プホルスの3度の受賞(2005年、2008年、2009年)は、いずれもリーグを代表する強打者たちがひしめく中でのものでした。彼はただ本塁打を打つだけでなく、三振が非常に少ないことでも知られていました。選球眼が良く、甘い球を一振りで仕留める技術は、全盛期の彼を語る上で欠かせない要素です。ドミニカ共和国出身の英雄として、ファンからも絶大な人気を誇りました。
キャリア晩年は怪我に苦しむ時期もありましたが、2022年に現役最後となったシーズンで通算700本塁打を達成するなど、最後までレジェンドとしての輝きを失いませんでした。彼の3度のMVPは、努力と一貫性の賜物であり、すべての若い打者にとっての最高のモデルケースと言えるでしょう。
マイク・トラウト:セイバーメトリクスの申し子
2010年代のメジャーリーグにおいて、最強の名を欲しいままにしたのがマイク・トラウトです。彼は2014年、2016年、2019年の3回MVPを受賞しました。トラウトの凄さは、打撃・走塁・守備のすべてが高いレベルで揃っていることです。特に、データ重視の現代野球において重要な指標となるWARにおいて、彼は毎年のようにリーグ1位を記録しました。
トラウトが登場するまで、MVP争いは本塁打や打点といった目に見えやすい数字が重視されていました。しかし、トラウトの活躍によって「四球を選ぶ能力」や「走塁での貢献度」がいかに勝利に直結するかが広く認識されるようになったのです。彼はまさに、セイバーメトリクスという新しい評価軸を世に知らしめた選手でもあります。
怪我が増えてきた近年では欠場も目立ちますが、彼が健康な状態でプレーすれば、今でも世界最高の選手の一人であることに変わりありません。トラウトの3度の受賞は、野球の評価基準が大きく変わった時代の象徴でもあります。彼が今後、さらに受賞回数を伸ばしてランキングを駆け上がるのか、多くのファンが期待を寄せています。
歴史的な本塁打王!アーロン・ジャッジの衝撃
近年のMVP争いで欠かせないのが、ニューヨーク・ヤンキースの主砲、アーロン・ジャッジです。彼は2022年、ア・リーグ記録を塗り替えるシーズン62本塁打を放ち、大谷翔平選手との激烈な争いを制してMVPを受賞しました。身長2メートルを超える巨体から放たれる打球は、まさに圧巻。ヤンキースという名門チームのキャプテンとしての重圧を跳ね返しての受賞でした。
ジャッジの凄さは、そのパワーだけでなく、高い出塁率と安定した守備力にもあります。2022年の受賞は、まさに「歴史を作った年」としての評価でした。伝統的な本塁打という記録で、二刀流という異次元の価値に打ち勝ったことは、野球界に大きなインパクトを与えました。彼は古き良きスラッガーの系譜を継ぎつつ、現代的な高い技術を兼ね備えたハイブリッドな名選手です。
2024年も異次元の打撃成績を残しており、常にMVP候補の筆頭として名前が挙がります。大谷翔平選手がナ・リーグに移籍したことで、今後はア・リーグにおける「絶対王者」としての地位をより確固たるものにしていくでしょう。ジャッジのようなスター選手が活躍し続けることが、メジャーリーグのランキングをより熱く、面白いものにしています。
MVP選考の基準はどう変わった?評価ポイントの変遷

MVPという賞は、その時代の価値観を色濃く反映します。かつては重視されていた指標が今では二の次になったり、逆に昔は誰も気にしていなかった数字が決定打になったりすることもあります。MLB歴代MVPランキングを深く理解するために、選考基準の変遷についても触れておきましょう。
打率・本塁打・打点の「三冠王」至上主義だった時代
1990年代くらいまでのMVP選考では、いわゆる「クラシックスタッツ」と呼ばれる打率、本塁打、打点の3つが決定的な役割を果たしていました。特に「100打点」という数字は、勝負強さの象徴として高く評価され、これを超えているかどうかが受賞の大きな境界線になっていたのです。
そのため、いくら出塁率が高くても本塁打が少なかったり、チームの成績が悪くて打点が稼げなかったりする選手は、なかなかMVPに選ばれにくい傾向がありました。また、守備の貢献度は今ほど精密に数値化されていなかったため、ゴールデングラブ賞を受賞しているかどうかといった印象論で語られることが多かったのも、この時代までの特徴です。
しかし、この基準だけでは測れない「真の貢献度」があるのではないか、という疑問が徐々に専門家やファンの間で広まっていきました。野球というゲームの本質は「アウトにならないこと」であり、「いかに効率よく得点に絡むか」であるという考え方が、新しい評価基準を生み出していくことになります。
セイバーメトリクスの導入とWARの重要性
2000年代中盤から、メジャーリーグでは統計学に基づいたデータ分析「セイバーメトリクス」が急速に普及しました。これによって、これまで見過ごされてきた「四球の価値」や「走塁での進塁期待値」、「守備位置による難易度の違い」などが明確に数値化されるようになったのです。その集大成がWAR(Wins Above Replacement)という指標です。
今の記者たちは、投票の際に必ずと言っていいほどこのWARをチェックします。たとえ本塁打王を逃していても、守備や走塁を含めた総合的なWARがリーグ1位であれば、その選手がMVPに最もふさわしいと判断されるケースが増えました。これにより、派手な数字はなくてもチームに静かに、かつ確実に勝利をもたらす「職人タイプ」の選手にも光が当たるようになったのです。
この変化は、MVPランキングの顔ぶれにも影響を与えています。マイク・トラウトがその最たる例であり、彼の圧倒的なWARは、従来の価値観では測りきれなかった「野球選手としての完成度」を正当に評価させた結果と言えるでしょう。データが野球をより深く、公平に見るための手段となったのです。
「勝利貢献」か「最高の個人成績」かという永遠の命題
MVP選考において、常に議論を呼ぶのが「所属チームの成績をどこまで考慮すべきか」という点です。MVPは「Most Valuable Player」の略であり、直訳すれば「最も価値のある選手」です。そのため、「最下位チームでいくら良い成績を残しても、チームを勝たせていないなら価値はない」という意見と、「野球はチームスポーツであり、個人の力では限界がある。純粋に最も優れた選手を選ぶべきだ」という意見が対立してきました。
かつては「プレーオフに進出したチームから選ぶ」という暗黙の了解が強かったですが、近年ではその傾向も和らいでいます。大谷翔平選手がエンゼルス時代に低迷するチームの中で満票MVPを獲得したことが、その象徴的な出来事です。チーム成績が悪くても、個人のパフォーマンスが歴史的なレベルであれば、それは「価値がある」と認められるようになったのです。
とはいえ、優勝争いというプレッシャーの中で結果を残し続ける選手の価値も無視できません。今後も、数字の凄さとチームへの影響力のバランスをどう取るかは、記者たちの腕の見せ所となるでしょう。こうした議論が毎年行われること自体が、メジャーリーグの歴史を豊かにしている一因でもあります。
MVP選考は、もはや単なる数字比べではありません。その年のリーグ全体の物語を象徴する選手が誰であるかを探す、壮大な投票イベントなのです。
まとめ:MLB歴代MVPランキングが物語る野球の奥深さ
ここまで、MLB歴代MVPランキングを中心に、最多受賞者や満票での快挙、そして選考基準の変遷まで詳しく解説してきました。メジャーリーグの歴史は、そのままMVPを受賞してきた天才たちの歴史でもあります。
バリー・ボンズが打ち立てた7回という金字塔、ベーブ・ルースやテッド・ウィリアムズといった伝説の影に隠れたエピソード、そして現代の怪物であるマイク・トラウトやアルバート・プホルスの支配力。どの時代にも、私たちの想像を超えるようなプレーでファンを魅了するスターが存在していました。
特に、日本の誇りである大谷翔平選手が、投打二刀流という不可能な挑戦を継続し、3度の満票MVP(2024年時点)を含む偉大な実績を積み上げていることは、歴史の証人として非常に光栄なことです。彼はまさに、ランキングの常識を塗り替える存在として、これからも私たちを楽しませてくれるでしょう。
MVPという賞は、単なる表彰以上の意味を持ちます。それは、その時代に最も輝いた才能を公式に認め、後世に語り継ぐための称号です。これから野球を観戦する際は、ぜひ各選手の個人成績だけでなく、「この選手が今年のMVPにふさわしいか?」という視点を持ってみてください。きっと、これまで以上に1試合1試合の重みや、選手の凄みを感じられるようになるはずです。

