近年、日本人選手の移籍や交流試合などで注目度が高まっている台湾プロ野球(CPBL)。スタジアムを彩る華やかなチアリーダーの存在だけでなく、リーグ自体のレベル向上も話題になっています。そんな中で、野球ファンとして気になるのが選手の「お金」に関する事情ではないでしょうか。
台湾プロ野球の年俸は日本と比べてどのくらいの水準なのか、トップ選手はいくら稼いでいるのか、最新の情報を知ることで観戦がさらに深まります。この記事では、台湾プロ野球の年俸相場やランキング、契約の仕組みまで分かりやすくお伝えします。
台湾プロ野球の年俸相場と日本との大きな違い

台湾プロ野球の給与体系を理解する上で、まず知っておくべきなのは日本(NPB)との習慣の違いです。日本では「年俸」という言葉が一般的ですが、台湾では月々の給料を示す「月俸」という考え方が主流となっています。
基本は「月俸制」!12ヶ月分が年俸の目安
台湾プロ野球では、年俸を12分割して毎月支払う「月俸制」が採用されています。現地のニュースや球団発表でも「月俸〇〇万台湾元」と表記されるのが一般的です。例えば、月俸が50万台湾元(約235万円)であれば、単純計算で年俸は600万台湾元(約2820万円)となります。
ただし、契約期間は必ずしも1年単位とは限りません。シーズン途中での加入や複数年契約など、選手の立場によって支払われる月数が異なる場合もあります。ファンの間でも「月俸がいくらか」という点が、その選手の格付けを判断する重要な指標として定着しています。
計算を分かりやすくするために、この記事では1台湾元=約4.7円として換算していますが、為替レートによって日本円での価値は変動します。最近の円安傾向もあり、日本円に直すと以前よりも高額に感じられるケースが増えています。
1軍の最低年俸と生活水準のリアル
華やかなスター選手がいる一方で、1軍の最低年俸についてもルールが定められています。現在の台湾プロ野球における1軍選手の最低月俸は7万台湾元(約33万円)です。これを12ヶ月分に換算すると、年俸は約84万台湾元(約400万円)程度になります。
日本のプロ野球における支配下登録選手の最低年俸は1600万円(1軍最低年俸に近い概念)であることを考えると、その差は依然として大きいと言えるでしょう。しかし、台湾の物価や平均年収と比較すると、プロ野球選手は十分に高所得者の部類に入ります。特に若手選手にとっては、1軍に定着することが生活を安定させるための大きな壁となります。
2軍選手の場合はさらに給与水準が下がりますが、球団から寮や食事が提供されることが一般的です。厳しい環境の中で切磋琢磨し、1軍での昇給を目指す構図は、どの国のプロ野球でも変わらない共通の姿と言えます。
日本(NPB)との格差と近年の上昇傾向
以前の台湾プロ野球は、日本の独立リーグよりは高いものの、NPBと比較すると極端に低いと言われてきました。しかし、近年はその状況が少しずつ変わりつつあります。リーグの規模が6球団に拡大し、観客動員数も伸びていることから、全体の年俸水準が底上げされているのです。
特にWBCやプレミア12といった国際大会での活躍により、台湾人選手の市場価値が高まりました。これを受けて、球団側も主力選手に対して数千万円から1億円規模の契約を提示するケースが出てきています。主力級の選手であれば、日本の2軍から1軍半程度の年俸に匹敵する額を受け取っています。
もちろん、ソフトバンクや巨人といったNPBのトップ球団と比べれば総額は及びませんが、台湾国内のスターとしての地位や待遇を考えると、以前ほど「安月給」というイメージではなくなりつつあります。むしろ、地元のスターとして長くプレーすることを選ぶ選手も増えています。
現在の台湾プロ野球における年俸ランキング上位のスター選手

現在、台湾プロ野球ではかつてないほどの大型契約が結ばれるようになっています。特にメジャーリーグ(MLB)を経験して母国に戻ってきた「帰国組」の選手たちが、年俸ランキングのトップを塗り替える事態が続いています。
史上最高額!張育成(ジャン・ユーチェン)の破格契約
2024年に大きな衝撃を与えたのが、富邦ガーディアンズに加入した張育成選手です。彼はメジャーリーグで通算20本塁打を記録した台湾史上最高の野手の一人であり、その獲得のために球団は3年6カ月で総額9250万台湾元(約4億3500万円)という空前絶後の契約を提示しました。
月俸に換算すると約220万台湾元(約1000万円)に達し、これまでのリーグ記録を大幅に更新しました。一人の選手に年間1億円以上のサラリーを支払うことは、これまでの台湾プロ野球の常識を覆す出来事でした。彼の加入は、リーグ全体のレベルだけでなく、契約の規模感をも一段階引き上げたと言えます。
これほどの高額年俸が支払われる背景には、彼が持つ圧倒的な実力だけでなく、集客力やグッズの売り上げといったビジネス面への期待も含まれています。実際に彼の出場する試合では観客数が増加しており、スター選手への投資がリーグ活性化に繋がることを証明しています。
代表の顔・陳傑憲(チェン・ジェシェン)と主力打者の待遇
ドラフトで直接プロ入りし、リーグの顔として君臨している生え抜きのスター選手たちも高待遇を受けています。代表的なのが統一ライオンズの陳傑憲選手です。彼はプレミア12でもキャプテンを務め、MVPに輝くなど台湾国内で絶大な人気を誇る安打製造機です。
彼の月俸は近年上昇を続けており、2025年シーズンには100万台湾元(約470万円)を超えるクラスに到達すると見られています。年俸換算で約5000万円から6000万円という数字は、台湾の純粋な国内派選手としてはトップクラスの評価です。守備や走塁も含めた総合力の高さが、球団からの厚い信頼に繋がっています。
彼のような「非・海外組」のスターが100万台湾元の大台を狙えるようになったことは、若手選手たちにとって大きな希望となっています。以前のように、高い年俸を求めて必ずしも日本やアメリカを目指す必要はなくなり、母国のトッププレーヤーとして成功する道が明確に示されています。
日本帰りの王柏融(ワン・ボーロン)が受ける期待と評価
かつて北海道日本ハムファイターズでプレーした「大王」こと王柏融選手も、年俸ランキングの上位に名を連ねています。2024年から新球団の台鋼ホークスに加入した彼は、チームの象徴として非常に手厚い契約を結んでいます。
具体的な数字としては、3年契約で総額3600万台湾元(約1億7000万円)クラスと報じられており、月俸にすると100万台湾元を優に超えます。日本での経験を経て戻ってきた選手に対し、その技術だけでなく、リーダーシップや若手への教育的価値も加味して評価されているのが特徴です。
王柏融選手のような日本帰り組は、ファンの間でも依然として注目度が高く、彼の打席一つひとつがニュースになります。球団としても、新興チームの知名度を上げるための広告塔としての役割を期待しており、それが高額な年俸という形で反映されています。
【2025年版】台湾プロ野球・推定年俸(月俸)ランキング例
| 順位 | 選手名 | 球団 | 推定月俸(日本円) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 張育成 | 富邦 | 約1,034万円 |
| 2位 | 陳傑憲 | 統一 | 約329万円(※上昇見込み) |
| 3位 | 江少慶 | 富邦 | 約532万円(※契約時平均) |
| 4位 | 王柏融 | 台鋼 | 約400万円以上 |
※1台湾元=4.7円換算。複数年契約の総額を月割りにした推定値を含みます。
球団別で見る年俸の傾向と契約の特徴

台湾プロ野球には現在6つの球団があり、それぞれ親企業の業種や経営方針によって年俸の出し方に特徴があります。資金潤沢な企業が保有する球団と、地域密着型や育成を重視する球団では、契約内容にも独自のカラーが現れています。
資金力が豊富な富邦ガーディアンズと中信兄弟
リーグ屈指の資金力を持つと言われているのが、富邦ガーディアンズと中信兄弟の2チームです。富邦は金融大手の富邦グループが親会社であり、前述の張育成選手や江少慶選手といったMLB経験者を獲得する際に、ためらいなく巨額の資金を投じる傾向があります。
中信兄弟もまた、台湾最大の銀行の一つである中国信託銀行を傘下に持つグループが運営しています。こちらは単にスターを集めるだけでなく、練習環境への投資や指導陣の充実にも資金を割いており、全体的な選手層の厚さが強みです。主力選手の平均的な給与水準も、他球団より高い傾向にあります。
これらの球団は、いわば「勝つための投資」を惜しまない姿勢を見せています。そのため、海外から戻ってくる大物選手の多くは、まずこの2球団との交渉が中心になります。ファンにとっても、どのような大型補強を行うのかがストーブリーグの大きな楽しみとなっています。
育成重視や独自の査定を持つ味全・統一・楽天
一方で、統一ライオンズや味全ドラゴンズ、楽天モンキーズは、バランスの取れた運営を志向する傾向があります。統一ライオンズは食品大手の統一企業が親会社で、伝統的に生え抜きの選手を大切にする文化があり、長期的に貢献した選手に対して段階的に昇給させる査定システムを持っています。
味全ドラゴンズは一度解散してから再参入した経緯があり、若手選手を中心としたチーム作りを行っています。そのため、全体的な年俸総額は抑えられていますが、成果を出した若手には一気に昇給を提示するなど、成長意欲を刺激する契約が特徴です。エースの徐若熙選手のように、将来の海外移籍も見据えた評価が行われます。
楽天モンキーズは、かつてのラミゴ・モンキーズ時代から続く独自のデータ分析を用いた査定に定評があります。パフォーマンスに応じた昇給が明確で、実力主義的な側面が強い球団です。日本の楽天グループのノウハウも一部取り入れられつつ、現地の市場に合わせた経営がなされています。
新参入の台鋼ホークスがもたらした市場の変化
2024年から1軍に参入した台鋼ホークスは、新球団としての話題作りのために積極的な投資を行っています。特に王柏融選手の獲得に見られるように、他の球団でプレーしていた有力選手や、実績のある海外経験者を「顔」として迎え入れる戦略を採っています。
新しい球団の参入は、リーグ全体の年俸相場を押し上げる要因にもなりました。有力選手を確保するためには、既存球団よりも良い条件を提示する必要があるからです。その結果、他球団も主力の引き留めのために年俸を上げざるを得なくなり、選手全体の待遇改善に繋がっています。
台鋼ホークスはまた、若手選手の獲得にも積極的で、ドラフト会議での契約金も以前の相場を上回る額を提示することがあります。これにより、台湾の有望なアマチュア選手たちが、早々にアメリカへ渡るのではなく、まずは国内リーグで経験を積むという選択肢を選ぶきっかけを作っています。
台湾プロ野球における外国人選手の年俸とスカウティング

台湾プロ野球を語る上で欠かせないのが、高い実力を持つ外国人選手の存在です。主にピッチャーが多く登録されていますが、彼らの年俸は地元の選手とは全く異なる基準で決まっています。
外国人選手は米ドル建て!相場は月額2万〜5万ドル
台湾プロ野球でプレーする外国人選手の年俸は、基本的に米ドル(USD)で契約されます。平均的な月俸の相場は2万ドル(約300万円)から3万ドル(約450万円)程度です。しかし、MLBでの実績がある選手や、NPBでも活躍できるレベルのエース級となると、月額5万ドル(約750万円)近くまで跳ね上がります。
彼らの多くは単年契約、あるいはシーズン単位での契約であり、常に結果を出し続けることが求められます。もし不調が続けば、シーズン途中であっても解雇される厳しい世界です。その分、インセンティブ(出来高払い)が充実しており、勝利数や奪三振数に応じてボーナスが支払われるケースが多いのも特徴です。
12ヶ月間フルでプレーすることは少なく、2月から10月までの約9ヶ月間分が支払われるのが通例です。エース級として年間を通して活躍すれば、日本円で年収5000万円から8000万円ほどを稼ぐことができ、これはマイナーリーグやアメリカの独立リーグに比べて非常に魅力的な条件となっています。
「8月31日の壁」が契約に与える影響
台湾プロ野球には、外国人選手の登録期限として「8月31日」という重要な区切りがあります。この日を過ぎると、ポストシーズンも含めたその後の試合に外国人選手を新しく登録することができなくなります。この期限を前にして、各球団はより優れた選手を求めて激しい争奪戦を繰り広げます。
この時期に加入する選手は、いわば「優勝のためのラストピース」としての役割を期待されるため、数ヶ月間の短期契約であっても高額な月俸が提示されることがあります。逆に、この期限を過ぎて契約を更新できなかった選手は、他国のリーグへ移るか、シーズンを終えて帰国することになります。
ファンにとっては、この8月末にどの球団が誰を連れてくるかが、ペナントレースの行方を占う大きなトピックとなります。球団側も限られた枠(同時に1軍登録できるのは3名まで)の中で最大限の効果を得るために、綿密なスカウティングと資金投入を行っています。
日本や韓国へステップアップする「再輸出」の舞台
近年では、台湾プロ野球で圧倒的な成績を残し、そこからさらに年俸の高い日本(NPB)や韓国(KBO)へと移籍する外国人選手が増えています。かつて中信兄弟でプレーしたロベルト・スアレス投手(現パドレス)や、楽天のブライアン・ロドリゲス投手などがその好例です。
台湾プロ野球は「ショウケース(展示場)」としての役割も果たしています。特にピッチャーにとっては、台湾の蒸し暑い環境で1年間投げきり、高い奪三振率を維持できることを証明すれば、アジアの他リーグのスカウトから声がかかる可能性が高まります。この場合、移籍先での年俸は数倍に跳ね上がることも珍しくありません。
選手側もそれを意識しており、台湾を単なる「稼ぎ場」としてだけでなく、キャリアアップのための重要なステップと考えています。そのため、非常にモチベーションの高いハイクオリティな助っ人が集まりやすくなっており、結果として台湾プロ野球全体のレベル向上に寄与しています。
近年の年俸上昇を支える背景とプレミア12世界一の恩恵

台湾プロ野球の年俸が上昇傾向にある理由は、単なる球団の厚意ではありません。そこには、リーグを取り巻く経済状況の変化や、国際大会での歴史的な成功が深く関わっています。
プレミア12優勝で手にした1000万元超の臨時ボーナス
2024年に開催された「WBSC プレミア12」において、台湾代表は決勝で日本を下し、史上初めて世界一の座に輝きました。この偉業は台湾国内に空前の野球ブームを巻き起こし、選手たちの懐事情にも大きな影響を与えました。優勝による報奨金は、各選手に多額の富をもたらしたのです。
政府からの報奨金や優勝賞金の分配に加え、中信兄弟のオーナーをはじめとする各界からのボーナスを合計すると、主力選手一人が手にした臨時収入は1000万台湾元(約4700万円)を超えたと報じられています。これは中堅選手の年収の数倍、トップ選手であっても年俸に匹敵する額です。
このような「夢のある話」は、子供たちがプロ野球選手を目指す大きな動機になります。また、世界一という肩書きを得たことで、国内リーグにおける選手たちの査定も大幅にプラスに働くことは間違いありません。2025年以降の契約更改では、これまで以上の大幅昇給を勝ち取る選手が続出すると予測されています。
チアリーダー人気と球場イベントによる収益拡大
台湾プロ野球を支える大きな収益源となっているのが、チアリーダーによる「エンターテインメント化」です。いまやチアリーダーは単なる応援団ではなく、SNSで何百万人ものフォロワーを持つタレントとしての地位を確立しています。彼女たちを目当てに球場へ足を運ぶファンが急増しました。
球場内でのグッズ販売や、特定のチアリーダーとコラボしたプレミアム席の販売などは、球団にとって莫大な利益を生んでいます。野球そのものに興味が薄かった層を取り込むことで、チケット収入以外の収益柱が確立されました。この潤沢な資金が、選手の年俸へと還元されるサイクルが出来上がっています。
また、球場を「家族で楽しめる場所」にするための大型ビジョン設置や飲食コーナーの充実など、ハード面への投資も活発です。こうしたファンサービスによる収益の向上は、プロ野球を一つの独立した産業として成立させ、選手たちの待遇を支える強固な基盤となっています。
6球団体制への拡大と放映権・スポンサー料の増加
以前の4球団体制から、現在は6球団体制へと拡大したことも年俸上昇の大きな要因です。チーム数が増えることで試合数が増え、それに伴いテレビ放映権やネット配信の価値が高まりました。台湾では複数のスポーツチャンネルが放映権を争う形となっており、分配金が以前よりも増額されています。
企業のスポンサーシップも活発化しています。世界一を達成したことで、ナショナルクライアント(全国規模の大企業)が野球界への投資を加速させています。ユニフォームの袖やヘルメットに並ぶ企業ロゴの数は年々増えており、それらの広告収入が球団運営を助けています。
経済的な競争原理が働くようになったことも重要です。有力な選手がFA(フリーエージェント)権を行使した際、複数の球団がマネーゲームを繰り広げる光景も見られるようになりました。市場が活性化し、選手が自分の価値を適正に主張できる環境が整ったことが、現在の年俸上昇を後押ししています。
ちなみに、台湾の球場ではチアリーダーのグッズが飛ぶように売れていますが、選手のユニフォームや応援タオルも代表戦以降、売り切れが続出するほどの人気ぶりです。こうした「応援文化」の成熟が、今の高い給与水準を支えていると言えるでしょう。
台湾プロ野球の年俸まとめ
台湾プロ野球の年俸事情について、最新の動向を中心に解説してきました。かつての「日本よりも格段に低い」というイメージは、近年のリーグ拡大や世界一獲得といった劇的な変化によって塗り替えられつつあります。
今回の要点をまとめると、以下のようになります。
記事のポイント
- 台湾プロ野球は月俸制が主流で、1軍最低月俸は約33万円。
- 最高年俸は張育成選手の年換算で約1.3億円と、NPBに匹敵する額も登場。
- 外国人選手は米ドル契約で、月額2万〜5万ドルが相場。
- プレミア12での世界一達成により、多額のボーナスと年俸上昇の追い風が吹いている。
- 球団数の増加とチアリーダー人気などの収益拡大が、選手の待遇改善を支えている。
台湾プロ野球は今、まさに成長の真っ只中にあります。選手の待遇が良くなることで、より高いレベルのプレーが期待でき、それがさらにファンを熱狂させるという好循環が生まれています。次に台湾プロ野球の試合を観るときは、こうした選手たちの舞台裏にある「評価」や「期待」にも思いを馳せてみると、さらに観戦が面白くなるはずです。



